将棋電王戦(1)


将棋ファンのみならず、広く社会面にも取り上げられた将棋電王戦がコンピューターの3勝1敗1引き分けで終わったのは、意外と考えるか、当然と考えるかは、人により異なるところです。

今回の出来事で考えさせられたのは、コンピューターそのものの位置づけです。コンピューターの定義について皆さんはいかがお考えでしょうか?

古くは1901年に古代ギリシャの沈没船から回収された天文学用歯車式計算機が、紀元前100年頃作られた「アンティキティラ島の機械」として、その起源と言われています。古代ギリシャで作られた天文・暦は、現在も使われていることを考えるとその偉大さが分かりますね。


(アンティキティラ島の機械)

1900年代前半には、その登場自体が考えられていたかは、議論の分かれるところですが、第2次世界大戦が終結し、科学が急速に発展する過程で、コンピューターの存在が大きく寄与したことは間違いありません。

1950年頃に想定された役割は、四則演算が中心で、およそ現代のように一家に1台、一人1台と身近なものではなく、限られた場所・目的でのみ使用していたに過ぎませんでした。1960年代に大型レジスターがスーパーマーケットに使用していましたが、その他の小売店舗では、算盤や暗算で商取引(買い物)をしていました。

やがて1970年代に入ると、現在使われている電卓が登場しましたが、1970年当時の神奈川県における平均賃金は男性52050円・女性32620円でした。現代なら、1000円程度に付加されている機能が付いている物は高級品で当時1万円でした。いかに高級品かお分かり頂けると思います。

その後、コンピューターは、計算から回路を使用し、情報網の構築を目的として、金融機関における現金自動支払機が当初は同一金融機関の支店間取引のみでしたが、他の金融機関との取り引きにも広がりを1980年代には確立しました。このように、計算する機械から、情報処理を中心にその主たる目的が変遷し、活躍の場も広がりを見せてきました。

1980年代には、他方では文書作成を目的としたワードプロセッサー(ワープロ)が登場し、今まで印刷業者に依頼するようなものも、自宅で手軽にできる環境が広がり、産業構造の転換が叫ばれ始めたのもこの頃でした。

1980年代末期(平成元年)に漫画の神様手塚治虫が60歳で亡くなり衝撃を受けました。チビワンは幼い頃からファンで、鉄腕アトム・ジャングル大帝・ブラックジャック・リボンの騎士・火の鳥その他書き出したらきりがないくらい好きです。

手塚治虫は、鉄腕アトム「ロボイドの巻」でレーザーデイスク(DVDの前身)を、それ以外でもGPS、携帯電話、クローン等現代社会に使われている技術の登場を予言しているので、ある催し物に参加していたロボット技術者に尋ねたところ、ロボットとコンピューターに接点はないが、我々技術者も手塚治虫に影響を受けその実現を目指していると言われたことを思い出します。



集積回路もトランジスターからLSI、超LSI、ICを経て現代に至ります。産業用で限られた場所で使われていたコンピューターの機能の一部が、電卓・レジスター、ワープロ、現金自動支払機とそれぞれに必要な分野で其々発展し、技術革新により価格も安くなり、私たちの生活に身近なものになりました。

コンピューターにおける情報処理は、与えられた情報をそのまま処理するだけでなく、情報を基に可能性を探り其々の状況に最適なものを考え実行するのが可能になってきました。今回、電王戦においてはプロ棋士対コンピューターの対決自体が注目されましたが、人間対コンピューターの情報処理の対決と考えるのが正しいのではないでしょうか。

人間の特徴は、先入観があり、大切にすることです。これは、年齢を経て多くの経験を積み、知識を深めることで、時には深くなり、ときには修正していきます。

これに対してコンピューターは、与えられた情報に対して以前はしらみつぶしにあらゆる可能性を探ると言われていました。これは言い方を変えると、先入観にとらわれることなくと言うよりはそもそも先入観がなく作業を行うという事です。

先入観という言葉は、悪い意味で言われることが多いですが、むしろ思考の省略を行い狭い範囲で深く考えるという意味で捉えるのが正しいのではないでしょうか。

羽生三冠が、初タイトルの竜王獲得後20年以上にわたりタイトルを維持しているのは、先入観を大切にしながらも、その着目する角度が他の棋士とことにするのではないかと考えられます。それゆえ、他の棋士が着目しない角度から可能性を探っているのではないかと考えられます。

人間は、思考の過程で疲労が蓄積するのに対して、コンピューターは疲労することがありません。人間らしさ、人間の思考は一人一人特徴があり言い換えれば癖があるとも言えます。この共通された癖の中から正しいとされるものが将棋の場合手筋・定跡・大局観として確立されていきます。

今回のコンピューターはプロ棋士の棋譜を入力して、手筋、定跡、大局観を覚えさせたといわれています。つまりその内容においては、プロ棋士同士の対局と何ら変わることなく、姿形がコンピューターであったに過ぎないと考えることが出来るのではないでしょうか。

与えられた情報を基にその仕事を完了させるというコンピューターの性質がこれからも不変である限り、人間を超えることはありえないし、超えさせてはいけません。

手塚治虫は、医学博士でもあることから、生命倫理、自然に対する畏敬の念、科学に対するその無限の可能性と誤った使い方による恐怖、歴史は為政者の側からの偏った見方があり埋没した歴史があること等を説いています。

人間と科学の共存が今回の対局の隠れたテーマだと思います。次回の対局は、より人間らしさとコンピューターらしさが出た方が良い結果が出るのではないでしょうか。
 

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2020.02.15 Saturday
 
 
細かい所を指摘して恐縮なんですが
「コンピューター」ではなく「コンピュータ」が
正解ですね^^;まあ、分かれば良いのですがw

コンピュータが自分で思考する事が無い限り
人間を超えることはないですね。

無敵囲い | 2013/04/26 12:08 AM
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