【インタビュー】佐伯五月さん その2

2010.10.15 Friday
 

【インタビュー】佐伯五月さん
その2 登山から帰らなかったときは青くなりました


(その1は
こちら

▲それでは、佐伯先生が現役の頃のお話を伺います。いわゆる「勝負師の妻」としてのご苦労などは。

「日頃から『普通でいいよ』と言われていました。対局の前日にご馳走を作るようなこともなかった(笑)。主人は対局通知を部屋に置き、対局後に結果を書き込んでいました。それを見て、あっ、勝ったんだな、とか知るような感じで」


(対局通知書。下に○×の書き込みが)

▲仕事を家庭に持ち込まないタイプだったのですね。あるいは努めてそうされていたのかもしれませんね。

「対局の日は大抵翌朝に帰ってくるのですが、もちろんそのときの雰囲気で勝敗も分かりました。勝った日は子供に遊びに行こうかと話し掛けたり、負けた日はさすがに疲れた様子で『部屋で少し休む』と言ったり。負けたから家で荒れるようなことはありませんでした」

▲よく出来たご主人です(笑)。きっとそれも奥様の支えがあってこそなのでしょうね。

「主人から怒られた記憶はほとんどありません。ただ、現役の最後の方は(思うように勝てなくなって)……お酒が進みましたかね。『もう辞めたら』なんて話もしましたが、そのときはそうせず、それから3、4年後に引退しました。本人も納得して決断したようです」

▲佐伯一門と言えば、素晴らしいお弟子さんたちで有名ですが。

「親御さんに連れられて道場を訪ねてきた人がほとんどです。ただ、主人は弟子を取ることに積極的ではなかったようです。プロになることは簡単ではないし、その人の大切な青春の時期を預かる訳ですから……。弟子たちには将棋はよく教えていたようです。自分は師匠から教わらなかったから、と聞いたことがあります」

▲一門で集まったりすることは。

「現役の頃は、道場の常連さんたちも交えて、定期的に懇親を深めていました。引退したときには、盛大にお祝いしてもらい、本人もとても喜んでいました。斎田さん(斎田晴子女流四段)が女流名人になったとき、お祝いは何がいいか聞いたら、ハワイに行きたいと言うので、一門でハワイに行きました。皆自腹でしたけど(笑)。私は初めての海外旅行だったので、とても楽しい思い出になりました」

▲それも一つの師匠孝行ですね。では、今だから明かせるエピソードなどがありましたら。

「七段が長く続いていたとき、主人の父親から『早く八段になるよう、息子に伝えてほしい』と、毎月手紙が送られてきました。1987年に八段に昇段し、義父はその1カ月後に他界しました」

▲……。不思議な因果ですね。お義父様も安心して旅立たれたことでしょう。


(八段昇段のお祝い。中央は弟子の中村修王将(当時))

「それと」

▲はい、他にも。

「主人は旅行が好きで登山などによく出掛けていたのですが、あるとき、予定の1週間が過ぎても帰らず、お稽古先から『先生が見えないのですが』と連絡が入ったときは青くなりました。仕事をすっぽかすような人ではないので。その後に対局も入っていたんです。結局10日経って、げっそりとやつれて帰ってきました。木曽の駒ヶ岳で遭難していたそうです。対局には間に合ったと。もちろん負け(笑)」

▲それは大事でしたね。捜索願は出さなかったのですか。

「そういうことが思い浮かばなくて。後で回りから『ずいぶん薄情ね』と冷やかされました(笑)」

(その3に続く)
次回(最終回)は、趣味やご家族について伺います。お楽しみに。
 

宿題(10.10.14)


●必至(1手必至)


●詰将棋(7手詰)
 

【インタビュー】佐伯五月さん その1

2010.10.11 Monday
 

【インタビュー】佐伯五月さん
その1 主人はサロンがある日を楽しみにしています


サロンを陰から過不足なくサポートする佐伯先生の奥様・五月さん。受講者にも五月さんの人柄を慕う人たちが少なくありません。
サロンの成り立ちから、趣味やプライベートまで、広くおたずねしました。

全3回に分けてお届けします。初回はサロンが開かれるまでの経緯を振り返っていただきました。(インタビュー:ピリ辛流、高野豆腐)


佐伯五月(さえき・さつき)さん
大阪市東住吉区出身。
1962年、佐伯昌優四段(当時)と結婚。藤沢市在住。
ぶしつけな質問にも、一つ一つ丁寧にお答え下さいました。

▲いきなりですみません。ご結婚のなれそめからお伺いできますか。

「知り合ったのは京都。祇園祭のときでした。私は大阪から来ていて、主人は大阪で対局した帰りだったようです。親には結婚を反対されました。将棋指しが職業として知られていなかった時代です。東京に嫁ぎ、1964年に茅ヶ崎に引っ越しました。団地が当たったんです。主人は平日家にいることが多かった。ご近所からは失業していると思われていたかもしれません(笑)」

▲このサロンが開かれた経緯をさかのぼってお聞きしたいのですが。佐伯先生が将棋道場を開かれたのは。

「上の息子が小学3年のときに、藤沢に道場(湘南将棋道場)を開きました。育ち盛りの子供が二人、やはり生活を安定させたいという意味合いがありました。お昼前に道場の鍵を開け、夕方まで手合い係を務めました。(主人が)早く来ないかな、と思いながら。その頃は将棋のルールも知らなかったんです。お客さんも次第に増え、土日には1日100人を超すようになりました。床が抜けないかと心配しました(笑)」


(湘南将棋道場)

▲道場内で教室を開かれたのは。

「地元のタウン紙から依頼があり、初心者教室を開きました。その頃からいらした方が、今でも多くサロンに見えています。主人が引退し、一時体調を崩したことをきっかけに、道場の閉鎖を決めました。お客さんが減り、赤字になってまで続けるつもりもなかったので。32年間営業しました。その後、教室のお仲間はあちこちの道場に出向くようになり、私もよくお誘いを受けていました」


(初心者教室)

▲生徒たちも行き場を失って残念がっていたのですね。

「主人に相談し、今の会場を見つけ、月に2日、今の教室(サロン)を始めることにしました。主人も未練があったのでしょう。やはり将棋が好きなんですね。今でも毎月2回、サロンがある日をとても楽しみにしているようです。『勉強しないと』とか『宿題を作らないと』とか、家でもうれしそうですから」

▲今のお話を聞けただけでも、今日お会いした甲斐がありました(笑)。ところで当初は女性オンリーだったそうですね。

「ええ、『佐伯八段将棋サロン 女性教室』でした。案の定、男性の常連さんから参加できないかという要望があり、性別不問として今に至っています。男女混じって和気あいあいも良いのではないでしょうか」

▲ご自身の将棋はいかがですか。

「もう少し強くなりたいけど、さっぱり……。サロンのとき以外、家では勉強しないので。あっ、サロンの宿題は解いています。いつの間にか主人に見られていて、『どうしてそういう発想をするかな〜』なんて言われて、止めちゃう(笑)」

(その2に続く)
次回は「勝負師の妻」ならではの逸話?にも迫ります。お楽しみに。
 

陣屋リポート(10.09.29)


「皆さん、陣屋に行かれませんか?」
と、佐伯先生が仰ったのは、前々回の、サロンでの事。

そして、ホワイトボードには、燦然と輝く、第58期王座戦第3局、現地大盤解説会、IN陣屋の文字が。

陣屋さん…。陣屋事件の陣屋さんですか…。

羽生善治王座VS藤井猛九段ですか。
秦野市、鶴巻温泉駅から徒歩4分なんですか。
解説は、森内俊之九段、聞き手安食総子女流初段ですか。
歴代の方々の色紙があるんですか。
宮本武蔵の刀もあるんですか。

トトロの樹もあるんですかっ。
………

参ります!


陣屋リポート

そのようなわけで、サロン受講者の数名は、陣屋の大盤解説会に行って来ました。



駐車場に着くと、まずいきなりの、太鼓でお出迎え。宿泊も致しませんのに…なんとなく恐縮です。

鯉の泳ぐ池の上を通って、館内へ。
到着は14時ちょっと過ぎ。解説会は15時からですが、すでに沢山の方がいらっしゃいました。
お代は広間に続く入り口のところで(2000円)。希望すれば、夕食のおにぎり(500円)も予約出来るんですね。見る側だって長丁場です…。
コーヒー等は嬉しい飲み放題でした。

解説会までの時間を利用して、ロビー探索など。



お庭も、凄く綺麗らしいです。靴を履くのが面倒で、お散歩しませんでしたが。

と、ロビーで、佐伯先生にお会いしました。
お知り合いの方と御歓談中でしたので、お写真撮れず。残念。
しかも、その後、見失ってしまいました。先生、何処ですか。



大きいです。なんか美味しそうですね。



棋士の方々の色紙が。綺麗な字。
サロンの先輩曰く、「陣屋に来ただけで(これらを見ただけで)、香車一枚分は強くなるよ。」とのこと。
信じていいんですか。

解説会

3時が近づいたので、広間へ。
皆が見つめる先には、大きなスクリーンに映し出された盤面。対局室の様子を中継している、モニター。そして、これから解説が行われるであろう、大盤が据えられています。

この時の局面は、確かこんな感じ。↓



挑戦者の藤井九段が、6四に角を打ったところです。
これに対して、羽生王座が、しばらくして▲4七金と指されました。
だんだん大広間の人口密度も高くなる中…
思いのほかひっそりと、解説者の森内九段と、安食女流初段が御登場なさいました。
大きな拍手と、シャッター音の嵐です。

初手から、おさらいして下さるんですね宜しくお願い申し上げます。

「まだ、駒はぶつかっていませんね。」と安食女流初段。
4七金の次は、どうなるんでしょ…。

▲4七金▽4五歩▲6五歩▽4六角。
何だかドキドキします。



ふと、お隣に座る、藤井九段ファンの先輩が、「この中で、藤井先生ファンの人の割合はどのくらいだろう。」と呟かれました。
ん〜…
“羽生先生が好きです。でも藤井先生の方がもっと好きです。”という方と、“藤井先生が好きです。でも羽生先生の方がもっと好きです。”(@松〇引越センター)という方のどっちが多いか、ということですよね…、この場合…。

解説の先生もくるくる変わる、贅沢さです。↓



さて、指し手も色々進んで(凄くざっくり)、夕食休憩前には、このような局面でした。↓



ここで出題されたのが、“次の一手問題”。
次の羽生王座の手を当てろ、と仰るんですね。
正解者には、対局者のお二方直筆色紙などが頂けるとか。
森内九段が挙げられた候補手は、“3三角成”、若しくは、“9五香”。
「後は、私が信用出来ないという方は、御自身で考えてお書き下さい(笑)。」
とのことでした。
とりあえず、何も考えずに、3三角成。

夕食休憩中



どこでも、盤を広げるのが、凄いところ。
しかも、王座戦を検討しているとかでは無く、単に一局指しているという…。
これが、佐伯九段将棋サロン魂です…よ?

さてさて。
一局終えられた、先輩のHさんに伺ってみました。
「次の一手、何とお書きになりましたか?」
五九に香車と。」(H氏)
「へ〜。(この人、森内九段を信用してないんだな…)」

対局再開

七時になったので、対局が再開されました。
なかなか、お指しにならない、羽生王座。
「大多数の方が、本命の候補手を書かれてます。別の手を書かれた方は、数名ですね。」と、森内九段。
抽選になるのでしょうか。

と。
画面の、羽生王座の手が動きました。
「あ。指した。」
「何か打ったぞ!」とザワザワ。
打った?て事は、候補に無かった手を指されたって事ですか。
う〜ん。残念…。
でも、あれですね。プロの先生方が考えて、挙がらなかった手を当てるなんて、そんなの…ある意味、一流のスナイパーです。
ゴルゴ13ですよね〜。

………

羽生王座の一手。↓



5九香。
って…あぁっ!
佐伯先生、どちらですか!
Hさんがデューク東郷だったんですけど!

吃驚してしまいました。
この手を当てられたのは、こちらの解説会では、Hさんと、もうお一方だけでした。凄いです…。ブラボーです。
羽生王座直筆の色紙、おめでとうございます!

このように、佐伯サロン的には一大イベントな出来事も乗り越え、さらに煮詰まっていく、王座戦、第3局。
夜も更けてきて、電車でお越しの方は、終局時間が気になっちゃいますよね…。
それにしても、私なんかは、棋力がへろへろなので、口開けて聴いてるだけですが、見ている方の質問や、突っ込みが結構激しいんですね…。皆さん、楽しそう…。

21時を回り、時計を気にしだす人々。
先にお帰りになった先輩から、メールで「どっちが形勢よし?」とのご質問が。いや〜…ごめんなさい。自分、分かりません。

モニターの中では、対局者のお二人が、忙しく扇子をパタパタしていらっしゃいます。お疲れでしょうね…。



解説の先生方も、大変です…。

私は何も分からないので、飛車で王手するかな〜?と思ったら桂が跳ねたり、ふいに(ふいじゃないかも)角が打ち込まれたりと、何だかもう、スペクタクル。

でも、そうこうしている内に、森内九段が仰いました。

「いや、羽生王座、やっぱり強かったですね。」
えェ!
もう、決まりなんですね?

そして……



で、藤井九段が投了なさり、羽生王座が19回目のタイトル防衛となりました。
う…角も、桂も、最後に物凄く利いてるんですよね?すごこわいです…。

終局したのは、結局、22時ちょっと過ぎ?でした。

対局なさっていたお二人は、傍で見ていた私達より、今日一日を、ずっと長く感じていらしたのでしょうか、それとも、逆に短く感じていらしたのかなあ。
羽生王座、おめでとうございます。藤井先生、お疲れ様でした。
解説の先生方も、全ての皆さんもお疲れ様でした。
棋士って、大変なお仕事ですね…。

全く、全然、天と地よりも隔たれた場所におりますが、せめて、失礼にならないように、出来る限りまじめにお勉強しようと思いました…。



ところで。
Hさんが獲得なされた色紙…。なんと。頂いてしまいました!
これからは、敬意をこめて、心の中で“ゴルゴさん”とお呼びします。
謝礼はスイス銀行に振り込めば宜しいですか。
 

サロン日誌(10.09.23)


今週のサロン

前回のサロンでは、まだ冷房が勇ましく活躍しておりましたのに…。
今週は、気温もお天気も急転直下で、佐伯先生の装いもすっかり秋仕様でした。

先生の講義(13:00〜14:00)

今回も、四間飛車VS居飛車。
先手が四間、後手側が居飛車です。
お馴染みの手順から、つらつらつらと進んで行ったら、今日はこんな感じの局面に↓

(▲7八金まで)

ん。後手が左の銀を5三に上げて、「急戦にしてみようかな〜。」との仰せ。
それに対して、いつもは5八に行って、美濃囲いの一翼を担っていたあの金が、ヘイっと(?)7八にやって来たんですね…。

ここから、居飛車に、よくある感じに6四歩から6五歩で「角交換しなさいよ。」と迫られるのは、普通に応じて、7七角成を同金と取れるので、大丈夫…て事ですか…ね?(手探り)

居飛車側も色々考えて…、では▲7八金に、▽6四銀と出て、次に7五歩と突いてみるのはどうでしょう?と。
そうなるなら、一例として、
6四銀→6九飛→7五歩→6五歩→7七角成→同金。

ではでは…▲7八金、▽7三銀で、棒銀的に行くのは…
7三銀→6九飛→8四銀→6八角→7五歩→7七金→7六歩→同金→7五歩→7七金。

他にも、▽4二金上などはいかがか。
4二金上→6九飛→6四銀→6五歩→7七角成→同桂で…え〜っと…
この辺から、のノートの記述が混乱をきたしてきてしまったんですが…(何やら、“4六にカク打ちたい”“カク交で5七カクが”などとあるばかりで、なんかもう自分で見返しても気の毒。)

……このような感じで

今回は、四間側が7八に金を持ってきた場合の、四間有利な変化の講義を拝聴しました。
そうか…6九に飛車をひいて、角の機動力をアップさせるんですね…。
先生、今週もありがとうございました…。(ざっくりした理解で申し訳ありません。)

フリー対局(14:00〜17:00)


対局を見守る佐伯先生。
近くにいらっしゃらないと思っても、受講者が内心「やってしまった…。」的な局面の時には、何故か必ずばっちり後ろで御覧になっている気がすると、皆さん仰っています。
対局後に、それらについて、御指導頂けるんですね


指導対局後の遠藤先生。
感想戦を。


楽しそうです…。
いえ、実は物凄くお困りの所なのかもしれませんが…。
でも、皆さん幸せそうに見えます。


希望すれば、時計を使用しての対局も出来ます。

夜間部(一時間目17:00〜19:00.二時間目19:00〜?)


お月様がいざよっていらっしゃろうが、大雨だろうが、お店でもお酒を片手に、堂々と将棋を。
次回はどんなお天気でしょうか…
 

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受講者随時募集

女性・初級者歓迎
見学もお気軽に


師範
佐伯昌優(さえき・よしまさ)九段

会場
フジサワ名店ビル 7階Bホール
JR・小田急藤沢駅南口2分

日時
第2・第4木曜日 13時〜17時

料金
入会金 2,000円
月謝 3,000円

対象
一般(年齢・性別・棋力は問いません。実力に応じて指導します)

内容
大盤で解説/指導対局もいたします/自由対局

備考
現在、30〜80歳代の男女半々の20数名の方々が、初心者〜有段者まで、棋力に合った楽しみ方をしています。(サロンの様子はこちら

お問い合わせ
E-mail s9ss@hotmail.co.jp
TEL 0466-82-9317

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