【新春インタビュー】佐伯昌優九段 その2

2011.01.02 Sunday
 

【新春インタビュー】佐伯昌優九段
その2 将棋は我慢、忍耐。「プロは苦しみ、アマは楽しむ」


(その1は
こちら

▲それでは、現役の頃の将棋のことを伺います。影響を受けた棋士は。

「木村義雄十四世名人です。木村名人は1952年に引退されました。私が奨励会に入会した年です。翌年、坂口先生(坂口允彦九段)が連盟の会長になり、弟子の私は塾生になりました。(塾生に空きが出た)。木村名人のお宅(茅ヶ崎市)には、給料袋や免状(署名をもらうため)を届けに行きました。一日出掛けられることがうれしいんです。おまけに奥様が食べ物や小遣いを下さる。あちらは大したことないけれど、こちらは大したことある(笑)。名人のお話も伺えました。将棋は教わらなかったけれど、勝負の厳しさに触れた気がします。『千日手は指さない』と仰っていた。確か一局もなかったはずです。後に茅ヶ崎に住んだのも、名人を慕う思いがありました」

▲他には。

「升田幸三実力制第四代名人にはよく怒られたけれど、可愛がってもらいました。大山先生(大山康晴十五世名人)は『佐伯くん、お茶くれる?』だけど、升田先生は『おい佐伯、お茶持ってこい!』ですから。仲間らとお宅に伺うと、『酒でも飲んでいけ』とか、根は優しい先生でした。塾生はあれこれ雑用を頼まれて大変だった反面、将棋を教わるなど特権もあった。恵まれていました」

▲師匠(坂口允彦九段)はどんな方だったのでしょう。

「大正モダンのハイカラな人。そして努力の人でした。終戦直後、仕事がないとき、『米兵にチェスを教えよう』と思い立ち、英語とチェスを辞書と首っ引きで一から勉強したそうです。一日24時間のうち、4時間を寝食に、残りの20時間を勉強に当てたとか。アメリカ人から、『どこのアメリカの大学を出たんですか』と聞かれたそうです。体力、気力とも桁外れでした」

▲……すごい……。「くろがね」の異名の由来ですね。

「酒場で飲み始めるともう止まりません。店のおかみが『閉店です』と言うと、先生は『いいから。お前が帰れ』と言って本当に帰しちゃう(笑)。翌夕、おかみが店に来ると、まだ飲んでる(笑)。正月にお宅に伺うと、一週間くらい寝ずに研究です。たまらず『先生、お先に寝ます』と言って、寝て起きると、まだやっている。とにかく徹底していました」

▲昔の人は鍛えが違うとは思っていましたが、これほどとは。それでは、一番の思い出の対局をお聞かせ下さい。

「四段昇段を決めた一局。プロなら皆そうではないかな。1959年9月、星田啓三六段戦です。当時は年に二人しか四段に上がれなかった。年二回、東西の一位同士が戦い(東西決戦)、勝った方が昇段です。星田六段は有名な阪田三吉名人王将のお弟子さん。このとき、C2クラスから降級していました。対局は大阪。現地は皆星田さんを応援していて、やりにくかった」

▲星田啓三六段
△佐伯昌優三段
奨励会 東西決戦
1959/09/12

19580912星田佐伯128手.gif
(四段昇段の図。投了図は△1五角まで)

▲では、生涯の一手は。

「中原誠名人との対局。1977年3月の棋聖戦本戦です。1図は歩を成り捨てたところ。ここから▲6四角(2図)の只捨てが三手一組の好手でした。この後寄せ損ねて負けてしまったけれど」

▲佐伯昌優七段
△中原誠名人
棋聖戦 本戦
1977/03/22

19770322佐伯中原66手.gif
(1図は△6三同銀まで)

19770322佐伯中原67手.gif
(生涯の一手。2図は▲6四角まで)

▲会心の手順ですね。名人も意表を突かれましたか。△同銀に32分使っています。それでは、先生が考える「将棋観」をお聞かせ下さい。勝負としての将棋と、娯楽としての将棋があると思いますが。

「前者で言えば、『我慢』『忍耐』です。ゲームとしては、どこでも気軽に楽しむことができる。子供も大人も。男も女も。『プロは苦しみ、アマは楽しむ』です」

(その3に続く)
この後、プライベートについてお聞きしました。次回(最終回)もお楽しみに。
 

【新春インタビュー】佐伯昌優九段 その1

2011.01.01 Saturday
 

【新春インタビュー】佐伯昌優九段
その1 サロンでは勝敗にこだわらず、のびのびと指してほしいですね


新年おめでとうございます。今年も楽しいサロンのひとときを過ごしましょう。
皆さまのご健勝とサロンの発展をお祈りいたします。

昨年の暮れに佐伯先生のご自宅に伺い、お話をお聞きしました。
新春のお年玉として、全3回に分けてお届けします。
初めに、サロンやこれまでの普及について振り返っていただきました。(インタビュー:ピリ辛流、高野豆腐)

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佐伯昌優(さえき・よしまさ)九段
1936年、鳥取県赤碕町(現・琴浦町)出身。
坂口允彦九段門下。1952年、奨励会入会。1959年、四段昇段。
順位戦B級1組通算5期。2002年、引退。2007年、九段。
弟子に、中村修九段、北浜健介七段、斎田晴子女流四段、高橋和女流三段、中村真梨花女流二段がいる。

▲佐伯九段将棋サロンも、この春7年目を迎えます。これまでを振り返られていかがでしょうか。

「おかげさまで7年が早く感じられます。サロンのモットーは『楽しみながら、強くなる』。皆さん楽しんで指していただいていると思います。上達すると自ずと楽しくなり、面白さも増してきます。サロンではあまり勝敗にこだわらず、のびのびと指してほしいですね」

▲少しは上達しているのでしょうか。「実感が湧かない」という声もよく聞きますが。

「皆さん間違いなく強くなっています。ただ自分一人だけではないのでね(笑)。基本をもっともっと学んでいただきたい。あれほど『香は下段から……』と言っても、実戦になると、角の頭にペタンと打っちゃう(笑)。今年は『歩』から『玉』まで、基本の手筋を解説したいと思います。繰り返しになりますが。特に歩の使い方はたくさん知ってもらいたい」

▲他にも上達のコツなどありましたら。

「新聞の将棋欄を見る。指了図からの次の一手を考えて、翌朝答えを見る。あっ当たったとか、私の方が強いとか。(正着ばかりとは限らないから)。毎日の積み重ねは大きいです。大会に出たときは、1カ所でも覚えておいて、『反省将棋』(盤に再現して振り返る)をしてほしいですね」

▲先生は長年道場を営まれ、普及に努めてこられました。普及への思いや思い出など、お聞かせ願えますか。

「1972年7月に藤沢に道場(『湘南将棋道場』)を開きました。一般の人が将棋を指す機会と場所を提供したかった。道場内で女性教室も開いたのも、一人でも多くの女性に強く(有段者に)なってほしかったからです。子供教室は辻堂や藤沢で長く続けました。今も『だんだん将棋教室』(藤沢市・児島毅代表)で土日に指導しています」

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(道場の常連さんと。1988年)

▲将棋イベントもたくさん手掛けられています。

「茅ヶ崎では『大岡越前祭』(茅ヶ崎市の春のイベント)で将棋大会を20年以上やりました。添田高明さん(故人。実力アマ五段の県議。後に茅ヶ崎市長)の協力に助けられました。『アマ名人戦』の神奈川県予選は、昔は東西に分かれて代表を決めていて、西側(藤沢・茅ヶ崎・平塚以西)を受け持っていました。『横浜名人戦』は、師匠(坂口允彦九段)から受け継ぎ、今年で53年になります」

▲どれも長く続いたものばかりです。デパートの将棋まつりは。

「藤沢のさいか屋ではずいぶん長くやりました。三越の知人が(経営支援で)さいか屋に異動してきていて、相談を受けたんです。『人を集めるなら……』ということで始めたんですね。若き日の羽生少年(羽生善治名人)も野球帽を被って来ていました。後年、羽生さんに当時のことを聞いたら、『よく覚えています』と」

▲今も続いているのは「京急将棋まつり」ですね。

「『横浜名人戦』を続けるに当たって、『ただ将棋を指すだけでは……』ということで、いくつかのデパートに掛け合い、今の形になりました。今年でもう13年目です。『横浜名人戦』は乗本真澄さんの力添えが大きかった。乗本さんは2006年に大山康晴賞を受賞されています。私の『得意戦法』は……時の権力者(知事や市長、会頭など)に談判に行くんですね。協力を取りつけ、一言挨拶をお願いする。すると新聞が記事で書いてくれる。書かれた人も喜ぶ(笑)」

▲「佐伯流」が長続きの秘訣でしたか(笑)。近年、将棋まつりも数が減ってきました。そんな中、「京急」はどんどん人が増えている。地元民としてはうれしい限りです。

(その2に続く)
次回は、現役時代の将棋の話を伺います。お楽しみに。
 

サロン日誌(10.12.23)


年の瀬の祝日にもかかわらず、今年最後のサロンは大入りでした。

【講義】
佐伯先生が所用につき、遠藤先生の講義です。

今までに多く解説された「振り飛車vs居飛車急戦」の復習を、
「形勢判断のしかた」を交えて解説して下さいました。



形勢判断には、(1)駒の損得、(2)駒の働き、(3)手番の3つの要素があり、

序盤は(1)駒の損得を、
中盤は(2)駒の働きを、
終盤では(3)手番を重視する。

「(3)手番が大事」の事例が大盤で示されました。

(1図は▲77同銀まで)


1図は後手が角交換をしたところ。
前にも見たような形ですねえ。(こちらの講義メモもご覧下さい)

後手が△86歩と攻めを続けると。
△86歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛▲77角△89飛成▲88飛
△同竜▲同角(2図)

(2図は▲88同角まで)


2図は、次に▲11角成や▲22飛が残り、「先手」になっています。
以下△44角▲同角△同歩▲82飛となれば、先手の攻勢が続きます。

さかのぼって1図では△22角(後の▲77角を打たせない)が本手でした。
また、これには▲56角という返し技があるのだとか。(変化は省略)

(3図は▲77同銀まで)


3図は1図とそっくりですが、△42金上と▲36歩が入っています。
この2手が入っているだけで状況が一変するのだとか。

△86歩以下、同様に進めると、
△86歩▲同歩△同銀▲同銀△同飛▲77角△89飛成▲88飛
△同竜▲同角△44桂(4図)

(4図は△44桂まで)


最後の△44桂の切り返しが、次の△36桂の「先手」になっています。
ここで手番が入れ替わるという訳です。
以下▲47銀打△89飛となれば、後手の攻勢が続きます。

少しの違いが大違い。
上級者はこうした細かなところに神経を巡らせて指しているのですね。
受講者一同、深いため息・・・。

【自由対局】
今年の指し納めという人も多かったことでしょう。
「終わり良ければ・・・」となりましたでしょうか。

それでは皆さま、素敵な新年をお迎え下さい!





【予告】
佐伯先生の新春インタビュー(全3回)を、年明けの1月1〜3日に連載します。
お楽しみに。
 

宿題(10.12.23)


●必至(1手必至)


●詰将棋(7手詰)
 

忘年会リポート(10.12.09)


佐伯九段将棋サロン忘年会2010

年末恒例、佐伯九段将棋サロン
忘年会、2010年度の様子をお伝えします。

いつも通りのフリー対局を終え、佐伯先生、奥様、遠藤先生も含めた皆で、おもむろに、しかし、いそいそとお隣のビルのお店へ。
今年は、だんまや水産さんにお世話になりました。

佐伯先生遠藤先生より、お言葉

初めに、先生方よりお話。

師曰く、“このサロンの趣旨は、楽しみながら、将棋が強くなること。”

はい、楽しいです。“強くなる”の部分に対して、全くお応え出来ていないのが、恥ずかしいですが…。
来年からも、頑張ります。

乾杯
17:00(ちょっと過ぎてたかも。)


宴のスタート。
今年は、男女合わせて、二十三名の出席だそう。賑やかです…。
この一年で、新しい方も随分増えました。

遠藤先生の御指名で、受講者、K田氏による乾杯の音頭が。
佐伯九段サロンの益々の御発展と、皆様の御健勝をお祈りして。
一年、本当にお世話になりました。
乾杯!

……

さてさて。
遠藤先生が皆の為にプランニングして下さったのは、だんまやさんの宴会コース。
飲み放題なんですね。
この後、豪華景品が当たる、懸賞詰め将棋も出題されるそうなので、大人の皆さん、あんまり召し上がり過ぎると、解けなくなっちゃいますか〜?
でも、酔拳みたく、逆に精度が上がるのかも?


(↑撮影者の、被写体に対する執着が感じられる一枚。)

子供の興味は、こっち。お料理も美味しいです。



ちょっとお酒が入った、遠藤先生。
いつもいつも、夜間部でまでも、遅くまで御指導ありがとう御座います。
これからも、宜しくお引き回しの程、お願い申し上げます。



佐伯先生は、日本酒を召し上がっています。
一年間、御指導本当にありがとう御座いました。来年からも、宜しくお願い申し上げます。
(実はこの時、ご夫婦でのツーショットを写させて頂こうと迫ったのですが、奥様の奥ゆかしさに阻まれ、断念しました。無念です…。)





うまうまです。

何かが始まった。
17:30(頃)

宴は進み、皆さんのお手元のグラスが、とりあえずのビールから、各々お好みの飲み物に、移行する頃。

緩やかになりつつあった会の空気に、活を入れるが如く、途轍もないスペクタクルが、私達の前で展開しました。

その名も…

〔受講者H氏による年末特大イリュージョンショー2010〕

なんと!
皆の予ねてよりの要望に応えて、受講者Hさんが、特技のマジックを披露して下さったんです。
ありゃま、びっくりです。


↑H氏による華麗な手妻に、一気に沸騰する宴席。

Hさん…。サロンではよく、その巧緻極まるパッシヴスキルで、相手の方を“Hマジック”とも云うべき異空間に送り込んでいらっしゃるのをお見かけしますが、こんな特技もお持ちだったんですね…。


↑新聞紙が、今、正に時空のひずみに消え去ろうとしている瞬間?※1

※1:ちなみに、マジックには付き物であるBGMが無かったので、この間、受講者達は、“オリーブの首飾り(だっけ?)”を熱唱しておりましたが、H氏がそれに合わせて不規則かつ、トリッキーな動きを見せるために、写真撮影は困難を極めました。野生動物を追ってるカメラマンの気持ちを理解しました(笑)。

Hさん、楽しませて下さって、ありがとう御座いました!
あのタバコと百円玉は、どこぞに行ったんですかね?
これからは、Hさんのことは、
“佐伯サロンのフーディ二”とお呼びするしかないです。

クイズ懸賞詰め将棋
18:00

はてさて。
先生がサロンで出されたクイズの答えですが。
“初手から、七手で詰んでしまう手順は何通りあるか?”でしたよね?

当たった方には、景品があるとか。
皆さん、それぞれに、「十通りくらいかな?」「百くらいあったりして。」
など、予想は様々。
ちなみに、遠藤先生の予想では、七通りくらいではないか、とのこと。

答えは…

……

29通り!とのことでした。

そんなに沢山あるんですか!ふェ〜。
景品は、30通りと予想なさった受講者の方に。おめでとう御座います。

29通り…。そんなあちこちに空いてる穴を、知らず知らずのうちに回避しながら、いつも指していたとは…まぁ、たどり着いた100手の後、ぎったんぎったんに詰まされてるんですけど…。

びっくりしました。

お次は、遠藤先生から詰め将棋が出題されました。
七手詰めです。


↑第一問。


↑第二問。

ん〜。分かんないな〜。
後で回答用紙を集めて、その中から、抽選で景品を下さるとか。
「人に聞くのも、カンニングも何でもあり!」
と遠藤先生が仰ったので、迷うことなく、どなたかが解き明かして下さるのを待つことにしましょうね〜※2。

※2:目論み通り、向かいのMさんと、お隣のOさんから首尾よく答えを引き出すことに成功。

その後、用紙を集めて、景品の抽選が、くじ引き形式で行われました。
皆さん、良き物当たりましたか?


第二部
19:00


二時間の宴会時間が、瞬く間に過ぎ去ってしまい、
とりあえずのお開きを迎えた佐伯九段将棋サロンの忘年会。
受講者Oさんによる、三本締めで、締め。

佐伯先生とは、ここでお別れしました。本当に、一年間お世話になりました。
まだ、年内にもう一回ありますが、来年からも、どうぞ宜しくお願い致します。

そして…
二十三名から、ぐっとメンバーは少なくなりましたが、お時間の許す皆さんで、新たな地平へ。



…って、平素、夜間部と称してお邪魔しているお店です。
奥様の五月さんも、いらして下さいました
お歌も拝聴してしまいました


↑佐伯九段将棋サロン名物、一局と一曲の凄まじい応酬。

皆さん、このような感じで、23:00頃まで盛り上がってしまいましたよ〜。

……一年、早いですね。

佐伯先生、奥様、遠藤先生、他の皆さんも、365日、毎日お疲れ様でした。
色々と、ありがとう御座いました。
来年は、一体どんな出来事が鏤められた佐伯九段将棋サロンになるのかなぁ。
 

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サロンの概要

受講者随時募集

女性・初級者歓迎
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師範
佐伯昌優(さえき・よしまさ)九段

会場
フジサワ名店ビル 7階Bホール
JR・小田急藤沢駅南口2分

日時
第2・第4木曜日 13時〜17時

料金
入会金 2,000円
月謝 3,000円

対象
一般(年齢・性別・棋力は問いません。実力に応じて指導します)

内容
大盤で解説/指導対局もいたします/自由対局

備考
現在、30〜80歳代の男女半々の20数名の方々が、初心者〜有段者まで、棋力に合った楽しみ方をしています。(サロンの様子はこちら

お問い合わせ
E-mail s9ss@hotmail.co.jp
TEL 0466-82-9317

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